土木

インフラメンテナンスにおける安全と効率性を同時に実現

パシフィックコンサルタンツ株式会社

パシフィックコンサルタンツは、戦後日本の復興に技術で貢献することを目的に、1951年に創立されました。それから半世紀以上にわたり日本の建設コンサルタント企業のトップランナーとして多くのインフラの調査・計画・設計やメンテナンスを手掛けてきました。

近年では災害時の構造物の復旧にも携わっており、危険な現場を安全かつ迅速に把握しなければならないという中で、3D計測や点群データ活用に取り組み始めました。

大型構造物の計測の難しさ

パシフィックコンサルタンツが手掛ける構造物は主に大型ビルや橋梁です。高さや幅が数十から数百メートルもある構造物のメンテナンス・改修を行う際に、その全体を網羅的に計測するのは非常に困難です。

時には地震や台風などで被災した構造物を扱うこともあります。人が近づけないような現場では、たとえ早急な復旧が求められたとしても、現場の計測作業すらままならない場合があります。

そのため従来は可能な範囲での計測作業を行い、そこで得られた部分的な情報を元に施工計画の策定や設計作業を行う必要がありました。

正確な情報取得のために

そうして計測した情報は構造物全体から見るとほんの一部のデータであり、離散的なものでしかありません。

「設計する際、一部のデータから残りの部分を設計者が想像して埋め合わさなければなりませんでした。したがってどうしても想像が含まれた図面になるため、常に不正確さを前提に工事の計画・準備を行っていましたが、それを変えたいと考えました。また、取得した点群データを、デスク環境で常に確認しながら作業ができるということに魅力を感じ、3Dレーザースキャナーと点群ソフトの導入を決めました」(交通基盤事業本部 橋梁保全室 中澤治郎氏)

BLK360とInfiPointsを選定

そこでパシフィックコンサルタンツは、3Dレーザースキャナーとしてライカジオシステムズ社のBLK360を、点群処理ソフトとしてInfiPointsを選定しました。

「BLK360は小型で持ち運びがしやすく、1回の計測時間が短いなどの理由で導入を決めました。ソフトは複数のものを試した結果、InfiPointsの操作性がよかったため選定しました」(交通基盤事業本部 橋梁保全室 大竹将輝氏)

平面自動抽出と断面作成機能を駆使

「InfiPointsでよく使う機能は点群からの平面自動抽出です。例えば橋脚を計測した点群をInfiPointsにインポートした後、平面抽出処理を実行し橋脚を面で正確に形づくります。次にその橋脚を輪切りにする部分を指定し断面を作ります。この断面図を2D図面として出力することで、これまで手間をかけても正確には描けなかった図面を短時間で高精度に生成することができ、プロセスの効率化を図れるようになりました」(大竹氏)

橋梁を3D計測し、桁に対して点群を平行・垂直に切断して作成した立面図・側面図の例

鉄道会社との協議に

「InfiPointsは他社と協力して工事を行う場合にもとても有用です。例えば採寸機能を用いることで、改修対象の橋梁が鉄道会社の線路や建物と近接している場合に、構造物間の正確な距離を先方に提示することができます。これによりお互いが効率的に準備と施工を行うことができ、手戻りも発生しません。また、任意の点を指定しそこに注記を書き込んだ上でお客さまにデータをお渡しすれば、必要な情報を分かりやすく的確にお伝えすることができます。他にも、InfiPointsの点群からのポリゴン自動生成機能が協業に役立った例があります。具体的には、点群の扱いに不慣れな設計会社にInfiPointsで生成したポリゴンデータを共有したところ、『従来は実際の現場を見ないまま作業に取り掛かるため設計が難しいが、ポリゴンデータを元にすることで正確な設計ができる』と大変喜ばれました」(中澤氏)

点群活用は働き方改革にも

「InfiPointsを導入したことで、ソフトでやれることはソフトに任せるという、いわば人とソフトのマルチタスク化が実現できたと捉えています。また図面の精度が向上し、手戻りも減ったためプロセス全体の効率化につながりました。こうした取り組みは、実効性のある働き方改革の一つと言えると自負しています。また当社は自治体とともに橋梁などのインフラをどう効率的に管理していくかを検討しています。現在は点群データから2D図面を作って共有・保管することがありますが、今後は3Dデータをそのまま活用していくという新しい手法を自治体や業界全体に提案していきます」(中澤氏)

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