新菱冷熱工業は設備リニューアル工事の計画立案に3Dデータを積極的に活用しています。その3Dデータの準備プロセスに3DレーザースキャナーとInfiPointsを取り入れることで、工数削減と実作業の効率化、さらには現場作業員の安全性向上を図っています。
新菱冷熱工業は全国各地の建物や施設において、設備の新設工事およびリニューアル工事を請け負っています。同社は施工業務を効率化するために早くから3Dデータを活用しています。
リニューアル工事を行う建物が比較的新しい場合には、竣工時に作られた図面を利用して既存設備を3Dデータ化することが可能です。一方、古い建物では、過去に行った改修の記録が反映されていない不完全な図面しか残されていなかったり、そもそも図面が存在しなかったりするため、改修計画を行うたびに現場で採寸作業を行いながら一から3Dデータを作成する必要があります。
このような人の手による現場採寸には、大きな工数と費用が伴います。特に建物の高所などを採寸する際には、仮設の足場を組む必要があるためコストがかさみます。また高温を発する設備があれば人が近寄ることもできず、そもそも採寸ができない場合もあります。
こうした課題を解決するため、新菱冷熱工業では中央研究所が中心となり、建物内部や設備の外形を非接触でデータ化できる3Dレーザースキャナー導入に関する調査・研究が行われました。
スキャナーメーカー各社の技術革新によって、3Dレーザースキャナーは近年急速に精度が向上すると同時に価格は低下しています。そのため、新菱冷熱工業にとってもハード面ではスキャナーの導入はしやすい状況でした。しかし、スキャナーで計測した大規模な計測データを軽快に画面に表示したり、画面上で手軽にシミュレーションしたりできる実用的なソフトウェアの導入も同時に検討する必要がありました。
新菱冷熱工業は複数の点群処理ソフトウェアを検証した結果、エリジオンのInfiPointsを導入しました。決め手となったのはInfiPointsが持つ以下の二つの特性でした。
新菱冷熱工業はすでに実際の施工プロセスにInfiPointsを導入し、業務効率の改善を図っています。
新菱冷熱工業は、地域冷暖房施設の大型冷凍機更新工事にInfiPointsを利用することで、モデリング作業の効率化を実現しました。まず、スキャナーで計測した点群データの位置合わせとノイズ除去を行い、さらにモデリング機能で点群データ内の配管や平面を抽出します。その後、同社が独自に開発した設備向け3D CADソフトウェア「S-CAD」にデータを受け渡し、InfiPointsで作成したデータをもとに既存の建物のCADデータ化を行いました。
この現場では、配管積層エリアが建物の上部にあったため、3Dレーザースキャナーを用いることで、従来のように手作業で採寸するのに比べて作業が効率化されたほか、InfiPointsが自動抽出した平面や配管モデルを用いることで、モデリングの作業時間の短縮が実現しました。
大型商業施設の空調機械室のリニューアル工事にもInfiPointsを利用しました。
まず、3Dレーザースキャナーで計測した点群データから空調機械室内の配管・平面を抽出します。それを元データとして活用し、残置する配管やダクト接続部のCADモデル化を効率的に実施しました。
さらに、新設する設備や配管のCADモデルを点群データ上に読み込み、InfiPointsのシミュレーション機能を用いて既設の電気設備や消火設備との干渉チェックを行いました。これにより、現場の簡単なスケッチや写真をもとにリニューアル工事の計画を立案する従来の方法に比べ、工事の手戻り発生リスクが大幅に軽減しました。
建設業界におけるBIM(Building Information Modeling)の普及に伴い、既設の構造物をいかに効率的に3Dデータ化するかがますます重要になっています。特に、新菱冷熱工業がリニューアル工事を請け負う建物は全国に点在しており、さらに今後それぞれの建物が高齢化を迎える中で、人手をかけず高い精度で工事を行うことがこれまで以上に求められます。
こうした状況下で、新菱冷熱工業はInfiPointsや自社開発ツールなどさまざまな技術を組み合わせた新たな施工方法を確立することで、リニューアル工事計画立案の効率化を図っています。