プラント設計

点群活用でプラント工事における高い安全性と効率性を同時に実現

株式会渡辺鐵工

現場を想像しながらの設計

渡辺鐵工が手掛ける製紙工場や化学プラントには屋外に大型のタンクが十数台並んでいたり、高さ数十メートルの建屋の天井付近に複雑に配管が設置されたりするのが一般的です。こうした設備の現場調査を行う際は、従来大掛かりな足場を設置したり高所作業車を搬入したりして作業員が直接計測を行っていました。

しかしコストやスケジュールの観点からこうした準備が難しい場合には、作業員が長いはしごに上って不安定な体勢で計測を行うこともありました。

「限られたリソースのなかで安全第一で作業を行うために、本来は計測すべき箇所も作業を断念せざるをえない場合があります。またお客さまに何度も工場に入れていただいたり設備を止めていただいたりするわけにもいかず、計測に長い時間をかけられません。その結果、設計時には必然的に設備や配管の一部は想像を交えながら図面を作らざるを得ませんでした」(工事部部長 鴫原一範氏)


後工程へのしわ寄せ―配管同士の干渉を増員で回避

現場と不一致な図面を基に工事を行えば、新設する配管が既存の配管・配線に干渉して収まらないなど当然のことながら問題が発生します。そうした場合でも、一度工事が始まれば図面を修正している暇はなく現場での改造または配管ルートの変更が余儀なくされます。あらかじめ決められた工期を守るためには、これらの予定外の作業は要員を追加して対応するしかなく、コストアップに直結することはもちろんのこと、場合によっては要員が確保できず工期が守られないかもしれないというリスクを常に抱えていました。

「これまでは何とか職人技と人手の確保で解決してきましたが、これからはそれに頼ることは難しいという危機感がありました」(鴫原氏)


3Dスキャナーと点群ソフトの導入へ―InfiPointsを体験版で確認

こうした問題を解消するため、渡辺鐵工は3Dスキャナーによる現場計測を取り入れることを決めました。さらに業界関係者から評判を耳にしていた点群ソフトInfiPointsも導入することにしました。

「InfiPointsの評判は聞いていましたが、購入前に体験版を使ってみることにしました。他社製品とも比べてみましたが、大きな点群データからの形状自動抽出処理のスピードが特に優れていました。他社製品では処理が終わらないデータでもInfiPointsは正常に処理をしてくれて、その安定性にも惹かれました」(鴫原氏)

InfiPointsを操作する工事部部長 鴫原一範氏

点群データ活用の広がり

「まれに現場の細かい部分の目視確認が必要になることがありますが、工場によっては自動運転で稼働しているために我々が頻繁に立ち入ることはできません。大まかであっても一度点群データを取得しておけることは非常に効果的です。また点群データには別の活用方法もあります。例えばInfiPointsで閲覧用ファイルを作成し、お客さまに工事の内容を事前に3Dで確認してもらっています。さらに現場に訪れたことのない作業員にデータを共有することで、関係者全員で工事のイメージのすり合わせができ、手戻りなくスムーズに、そして安全に工事を終えることができています」(鴫原氏)

点群を元にInfiPointsで配管や鋼材をCADモデル化し、さらに新規の配管や設備等のCADモデルを重ねることで工事内容を可視化した例

さらに渡辺鐵工ではポンプや大型タンクの制作と据え付け工事も請け負っており、今後はこうした新規設備と既設設備・配管との干渉を事前にチェックする搬入シミュレーションもInfiPointsで行っていく考えです。「シミュレーションの様子も動画にしてお客さまに見てもらえるので不必要な資料作成や説明のための時間の短縮もできると期待しています。さらに点群を目先の改修工事に活用するだけでなく、現状をリアルに再現した大事な情報資産としてお客さまに代わって保存・管理し、そして将来必要な時にしっかりと活用できる体制を今後も維持していきたいと考えています」(鴫原氏)

大型設備の工場への搬入工事の様子。今後はこうした工事の事前のシミュレーションにInfiPoints を活用する予定
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